今月初めころお問い合わせを下さった問屋町のマンションにお住いのO様。ワックス剥離とワックスがけをご希望です。フローリングに塗られたワックスの剥離洗浄は,現状を見せてもらい,試し落としをした方が良いです。下見に伺うことにしました。
ちょうど10年ほどたったマンションで,使われているフロア材は濃い茶色です。マンションに限らず新築時の引き渡しで経験していることですが,濃い茶色の床に光沢のあるワックスを塗ると,初めて部屋に入ったときから歩行による擦り傷が見え始め,引っ越しが終わったころには,すり傷だらけになります。
この部屋はリフォーム,清掃済みだったそうですが,やり直してもらったんだそうです。まだ直してほしいところがあったけれど,これ以上のレベルアップは難しいとのこと。Oさんは,床だけは何とかしたいということで,当店を探し出して下さったという流れです。支払いは,お掃除を担当した業者さんだそうです。
Oさんとしては,艶のあるワックスだと擦り傷が目立つこと,塗りむらが感じられること,かなりの高さまで巾木にワックスが塗られていることを問題として挙げていらっしゃいました。
まずは目立たないところで試し落とし。感じがつかめました。そして,艶を抑えたフロア材だとわかります。巾木の部分もきれいに落とせます。玄関上がり框部分も剥がしてみました。先ほどより厚く塗られている気がしましたが,落とせます。框は玄関に使われているのと同じセラミック素材で,ワックスを除去するときれいな反射になりました。
艶を抑えたフロア材で,剥離洗浄で終わらせるのも一つの手かと思ったのですが,Oさんは光沢を上げないワックスを塗ってほしいとおっしゃいます。リンレイのハイテクフローリングコートに艶消しタイプがあるので,それを塗りましょう。やってみてわかったのですが,剥離するだけだと床の傷みがかなり気になる感じだったので,艶消しワックスは正解でした。
削らないと剥がせないといった問題はないのですが,角部屋のため,面積が大きいです。1邸100㎡超だそうです。和室や設備を差し引いてもかなりの面積。最大22㎡の洋室を含めて4室,付属するクロゼット3,キッチン,廊下,そのほかCFで脱衣所とトイレ。
剥離洗浄に2日,ワックス塗りに1日と見積もりました。理想は空室状態ですが,すでにお住いの部屋ですので,やりくりが必要です。洗浄とワックス塗りを分離する訳に行かず,同時進行しました。3日もらったうちの2日の作業写真です。
大きなテレビ台を引き出してワックスの仕上がりを見てもらいます。1枚目が作業前。わかりにくいですが艶のあるワックスが塗られています。2枚目は剥離洗浄後,黄色のテープの向こう側にワックスが2回塗られています。ほとんど風合いが変わりません。ただ,フロア材表面のしわ加工が埋まるので,見る角度によっては艶が上がった感じに見えます。この仕上がりで良いということになりました。
下見の時に,冷蔵庫は簡単に引き出せますが,タイヤの跡がつくのでこのままにしましょう,とご案内していました。ですが,やっぱり全部をやり直してほしいと思うのは人情だろうと思います。これはほかの家でも課題になっているので,挑戦しました。1ミリのアクリル板と,階段養生を使っています。本当はポリカーボネートの板が欲しかったのですが,適当な厚みのものがありませんでした。やってみるとアクリル板でも問題ないし,階段養生もいらないかもしれません。
ビフォーアフターとしては,2日目にやった洋室の写真が揃っていました。作業前,剥離洗浄後,ワックス乾燥中,ワックス乾燥後です。艶消しのワックスの乾燥中はとても心配になります。当然ですが塗った直後はつやつやで,光沢が出そうな気がします。ところが乾き始めると,極端につやが引けるので,ワックス塗り失敗の様相を呈します。完全に乾くとほっとします。
2日目,3日目の後半は修正でした。特に広いリビングは髪の毛の抱き込みが多く,たぶん10か所以上の修正です。お恥ずかしい。修正はフローリングの板目単位でやるので,集中力を欠いたり,刷毛からしずくが落ちたりすればアウトで傷を広げることになります。
O様,このたびは当店へのご指名をありがとうございました。また,ご友人やご親族をはじめ,ご協力くださった皆さん,お世話になりました。