3月に始まった大理石テーブルの研磨再生とコーティング,納品にこぎつけました。インテリア店のM様からの問い合わせから始まり,紹介されたお客様はご両親の代から伺っているY様邸ということで,大変長らく時間をいただくことになりましたが,全面的なご理解ご協力に力をもらって完了できました。
コーティングによってかなり傷や汚れを防げますが,長い目で見ればメンテナンスは必要です。今後とも責任をもって美観を維持していきたいです。
M様から最初にお問い合わせがあったのは1月半ばでした。いろいろ打ち合わせの上,最初の施工は3月初め。傷も消えてピカピカに仕上がり,自分としては大満足でした。
ところが,8月半ばにM様からメールが入ります。すぐに飲み物の跡がついてしまい,「傷や汚れを気にしないで使いたい」というY様のご希望を満たせていないということです。
大理石は呼吸しています。床に貼ったものであれば,表面からはもちろん,裏側(床面)からも水を吸い込みます。水分だけでも石材内部の鉱物と反応して色が変わります。石灰が主成分なので炭酸や果汁には弱く,簡単に着色しますし,表面が荒れてしまいます。そこで僕の師匠の新井田さんは,石の呼吸を妨げないコート剤を開発しました。
ですがテーブルはちょっと違います。通常裏側から水を吸うことはありません。とにかく表面が水分,特に飲み物にさらされます。炭酸を含む飲料,赤ワインはキツイです。そこで,テーブル用の「膜を作る」コート剤も作ってくれました。赤ワインをこぼして一晩経っても表面が侵されないコート剤。
表面保護という部分では完璧なのですが,膜を作るコート剤は,大理石表面本来の「鏡のように映るのに柔らかい光沢」は失われ,人工的な鏡面になってしまいます。サンプルで試したのですが,やはり膜の光沢感が気に入りません。3月の時は,仕上がりを重視して,塗ってふき取る方法で仕上げました。
これだと,飲み物は一晩,あるいは数分で大理石表面に達してしまうようです。残念!
ですので,次のコーティングは質感の変化はわきに置いて,しっかり飲み物や傷を防ぐコーティングを目指します。サンプル実験が始まりました。3種類試しました。①樹脂ワックス,②シリコーンコート剤,③セラミックガードプラスです。性能としては③が良いのですが,塗り筋が出てしまった時の修復を考えて,②と決まりました。
そして9月末に改めて研磨コーティング。うまく塗れたと思ったのですが,乾くとあら不思議。筋状の虹彩が出ています。たぶん,わずかですがコート剤成分が吸い込まれ,ミクロレベルの塗り筋(凹凸)が発生し,その高低差で虹彩が発生するのだと思います。
これはテーブルに近いサイズのサンプルでも発生していたので,サンプルの方で試しました。サンプルでは2回目塗布の仕上がりではほぼ消えました。
ということで,別途水周りのお掃除を注文してもらった10月半ばに追加のコーティング。こちらは塗った僕の焦りが出て,「触ってわかるほどの」塗り筋発生(大汗。
さらにお時間をいただいて10月末に研磨とコーティング。これはうまくいったと思ったのですがトラブル発生。仕上がればそのまま使ってもらえるように,養生を剥がし,椅子も戻して撤収したのですが,あまりにも普段通りだったので,Yさんがテーブルに何か置いちゃったんですって(笑
夕方Mさんも確認にいらしたのですが,まさかの展開。Mさんはさすがです。カバンとかだったら,コート剤がくっついちゃったのでは?Yさんが,紙袋です。大丈夫!とのこと。
というわけで,窓ガラスのお掃除をすることになっていた本日,修正コーティングしました。範囲としては300ミリ角ぐらいでしょうか。傷を均したら,この部分だけでななく,全面再塗布です。
磨いたので削りカスが出ますし,日常利用されているテーブルなので,いったんアルカリで洗います。初めてケルヒャーWV1を使ったのですが,静かでいいです。タンクの構造は面倒になったと思うのですが,逆噴射なく限界まで吸ってくれます。乾かしながらガラス掃除。
バルコニーには外から入って先ほどのガラスの外側と掃き出し2箇所。掃き出しのガラスの高さが想定を超えていて,脚立が必要でびっくり。バルコニーの水道はワンタッチ用蛇口で,いいね!
最後ちょっと時間に追われながら,北側にあるサンルーフを洗いました。これ今回やっておかないと,来年は汚れが落ちにくくなるだろうと思って。結構面積があります。
10時半には塗りあがっていたので,14時半には乾いていたはず。お掃除終了の16時過ぎなら,十分使用に耐えられます。
虹彩もほぼ消えたと思います。塗り直しがあって膜も少しですが厚くなりました。これで安心して使っていただけます。1月から始まって,11月にお引き渡し。M様,Y様,大変長らくお待たせいたしました。私どもとしてもたくさんのことを学ばせていただきました。心より御礼申し上げます。