2020年6月7日
店長のひとりごと
(クリンサーブ店長ryoの不定期通信)

ハウスクリーニングに関係があるかもしれないし,ないかもしれないし
No.6 新型ウイルス対策と次亜塩素酸水

① NITEが公表したファクトシートの衝撃

② NITEのファクトシートは誤解されている

③ 次亜塩素酸水についてのおさらい

④ 次亜塩素酸水(溶液)と次亜塩素酸ナトリウム溶液は全く違います

⑤ 希釈について

⑥ 空間噴霧の有効性と安全性

⑦ 空中の濃度

⑧ 障害は薬機法?


①NITEが公表したファクトシートの衝撃

メルマガ第6号では,次亜塩素酸水は悪くないをテーマにお送りします。しつこいです(笑。

令和2(2020)年5月29日に,経済産業省内所管の独立行政法人(略称NITE)が「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート)と「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート)を公表しました。
https://www.nite.go.jp/data/000109500.pdf

このPDF資料を読むと,次亜塩素酸水で新型コロナウイルスを不活化できない,安全性が確認できない,まして空間噴霧には科学的根拠がなく,健康被害の可能性すらあるという印象を受けます。

実際に文部科学省は6月4日付で都道府県の教育委員会に「次亜塩素酸水の噴霧器の使用については,児童生徒等がいる空間で使用しないでください」と通知しました。NHKもこのことを取り上げて,「米子市は市内の小中学校のすべての教室などで予定していた次亜塩素酸水の噴霧器の設置を取りやめることにしました」と報道しました。
https://www.mext.go.jp/content/20200604-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

当店は,次亜塩素酸水を使いたくない方,実際に次亜塩素酸水を使って健康被害を受けた方がいらっしゃるとしたら,その方に次亜塩素酸水を利用して下さいとは言いません。

でも,これまで利用してきた方,もしかしたら20Lのパックインボックスに次亜塩素酸水がかなり残っているという方もいるでしょう。これからどうされますか?

僕はこの分野の専門外ですが,利害関係がないという意味では,公平な目線で書けると考えています。長くなります。流し読みして下さい。


②NITEのファクトシートは誤解されている

ファクトシートが公表されてから,次亜塩素酸水や噴霧器に関わる業者からも意見が表明されました。商売に関わることですから,意見を言いたくなるでしょう。僕にとって説得力のある意見表明と思えたのは,超音波噴霧器メーカーエコーテックの担当者,三浦宏樹氏のブログです。
https://echotech.co.jp/blog/

興味深かったのは,三浦氏はファクトシートの公表を歓迎しています。そして,ファクトシートが誤解されていると説明しています。

大雑把にまとめますと,①ファクトシートは「次亜塩素酸水で新型コロナウイルスを不活化できない」とは言っていない,②噴霧の安全性を問題にしている「消毒剤」とは次亜塩素酸ナトリウムやアルコールである,と解説されています。そしてブラックユーモア的に,③次亜塩素酸水は薬機法上「消毒剤」ではなく「雑貨」だとおっしゃっています。

この説明は言い逃れでしょうか? いいえ,NITEの追加説明をご覧ください。

NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について~よくあるお問い合わせ(令和2年6月4日版)「次亜塩素酸水に関すること」(一部抜粋)

「安全面から控えるよう弊機構が公表したとする報道が一部にありますが、噴霧利用の是非について何らかの見解を示した事実はございません」。
https://www.nite.go.jp/information/osirasefaq20200430.html

これから書いていきますが,噴霧利用は有効です。比較的密集の学校教室で,是非使ってほしいです。文部科学省は通知を撤回するだけではなく,推奨して予算を付けて下さい。(個人の意見です)。


③次亜塩素酸水についてのおさらい

「次亜塩素酸水」は殺菌料の一種であり、塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液です。平成14(2002)年6月に食品添加物として認定を受けました。除菌に次亜塩素酸水を使うという発想は日本独自のものなので,大事にしたいです。

認可された生成装置があり,作られた次亜塩素酸水は食品添加物ですが,容器に入れた段階で食品添加物ではなくなります。とても不安定(それゆえに除菌力がある)で,有効塩素濃度がすぐ低下するので保管できません。

それに対して,次亜塩素酸ナトリウム溶液をpH調整することで次亜塩素酸水(溶液)を生成することができます。pH調整に使うのは希塩酸,炭酸,クエン酸などです。純粋な次亜塩素酸ナトリウム溶液(ピューラックスなど)と(香料など添加物の無い)炭酸水の混和は簡単です。またジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かすことで加水分解が起き,次亜塩素酸水(溶液)ができます。ものすごく簡単に作れます。溶液中の次亜塩素酸は比較的安定しているため,数か月の保存が可能です。

NITEは,除菌の性能は製造方法ではなく,有効塩素濃度と酸性度(pH)を指標としています。この基準の公開は快挙です!次亜塩素酸水(溶液)はどのように作るとしても,使う時の有効塩素濃度,そして微酸性と呼ばれる範囲のpH(5-6.5)が総合的に優れています。

次亜塩素酸ナトリウムと炭酸混和について,化学式を添えておきます。 NaOCL+H2CO3=HOCL+NaHCO3 (次亜塩素酸ナトリウム+炭酸=次亜塩素酸+炭酸水素ナトリウム)

当店が一度に10L作る次亜塩素酸水(溶液)はpH6.5,250㎎/l(ppm)です。
参考にしているブログ「いつかここに」
https://blog.goo.ne.jp/nakama_1947

ただ,自作する次亜塩素酸水は水道水のpHで幾らかブレが出ますし,有効塩素濃度は温度,時間,紫外線の影響を受け,少しずつ下がります。先ほど紹介したブログには2か月で2割下がると書かれています。作ったものは冷蔵庫に保管し,小分けしたものは1週間以内に使いましょう。

いずれも無色透明で,無臭,あるいはかすかに塩素臭があります。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを溶かした液体は,独特の塩素臭を感じました。好みの天然精油をごく少量垂らせば気にならなくなります。


④次亜塩素酸水(溶液)と次亜塩素酸ナトリウム溶液は全く違います

次亜塩素酸水(溶液)は低濃度で強力な殺菌,ウイルス不活化の効力がありますが,人体への影響が少ないです。自分で作ればとても安価です。

デメリットは長期保管ができないこと,タンパク質に出会うと水に戻ってしまうことです。使用期限を考えて使いましょう。また,殺菌やウイルス不活化の効力を発揮させるためには,汚れをきちんと処理(清掃・手洗い)してから使って下さい。それが難しい時は,大量に使って下さい。

濡れるほどスプレーして,そのままにするか,10秒あるいはそれ以上経ってからキッチンペーパーなどで拭き取って下さい。テーブルや手すりへのスプレーはもちろん,開いたままの目や鼻の奥にスプレーすることもできます。(刺激を感じたら,濃度を落して試して下さい)。

次亜塩素酸ナトリウムは皮膚や粘膜に刺激性があります。薄めても次亜塩素酸水にはなりません。人体への噴霧はもちろん,空間への噴霧は絶対避けて下さい。希釈したものを清掃に使う際は手袋をし,必ず水拭きして洗剤成分を残さないようにして下さい。


⑤希釈について

言わずもがなですが,希釈について書きます。

例えば250ppmの次亜塩素酸水(溶液)を例に考えます。

100ml入るハンディスプレーがあったとします。250ppmを半分入れて残りを水で薄めると1:1で2倍希釈です。125ppmです。

超音波式加湿器,気化式加湿器の場合,給水タンクが2.5Lだとしたら,空のタンクに500ml入れて,残り2Lの水を足して下さい。1:4で5倍希釈になります。50ppmです。


⑥空間噴霧の有効性と安全性

今回のファクトシートには福崎智司氏の著作「次亜塩素酸水の科学―基礎と応用―」平成24(2012)年が何度も引用されています。この分野の権威とされている方なんですね。

その福崎氏は平成26(2014)年に「次亜塩素酸を活用した食中毒細菌およびウイルスの制御対策」という論文を公表されています。この論文の7項目目が「超音波霧化法による空間殺菌」です!

ここでは,空間噴霧した次亜塩素酸水が,部屋にある家具やカーテンに到達した時点で十分な濃度を保っていれば,除菌,ウイルス不活化できるという実験結果を公表しています。いわゆる物体表面のウイルス除去ができるという内容です。(空中に浮遊する菌やウイルスについての実験も行われており,効果が認められています)。

安全性についても,ラットを用いた90日間亜慢性吸入毒性試験を挙げて体重,血液学的検査,肺の病理組織に変化がないことが挙げられています。

金属材料への影響についても書かれており,結露が発生しやすい条件でなければステンレスや塗装面にほとんど腐食の心配はないと書かれています。
http://www.mac.or.jp/mail/141001/02.shtml

空中噴霧に用いる次亜塩素酸水(溶液)は経験上微酸性(pH5-6.5),50ppmが推奨されています。

ファクトシートには「確立された評価方法は見当たらない」と書かれていますが,実際に行われた試験や評価方法に言及しています。「効果がない,安全でない」とは書かれていません。


⑦空中の濃度

空間噴霧された次亜塩素酸水はどのくらいの濃度になるのでしょうか?

空気中の水分を湿度で表すことができますね。40%から60%が快適とされています。湿度を極端に上げると,水分は空中にとどまれなくなって結露します。ですから次亜塩素酸水(溶液)を空間に噴霧しても,飽和の限界があるので無限に濃い濃度にはなりません。

ごく単純な濃度計算をしてみます。

50ppm(㎎/l)の次亜塩素酸水(溶液)を時間当たり300ml噴霧する加湿器に入れた場合。
水の量に対して次亜塩素酸は0.005%ですから,1時間に0.0015㎎噴霧されます。(0.005×300/1000) 6畳間が22m3とすれば,換気しないで1時間後,0.0015/22=0.000068ppm(mg/m3)です。

次亜塩素酸より強力な塩素ガスのリスク評価でも長時間(365日以上)いる空間で0.00005ppm以下ですので,時々換気すれば安心です。次亜塩素酸水で目やのどが痛くなることは考えられませんが,異常が感じられたらいったん噴霧を中止しましょう。換気してから濃度を下げて再開できます。


⑧障害は薬機法?

次亜塩素酸水(溶液)は「雑貨」ですから,どんなに実験して結果が出ても,それを世間に広く公表することはできません。公表すると保健所から警告を受けます。

実際に長く次亜塩素散水(溶液)を製造しているメーカーは,多額の投資をして効果・安全性について実験し,有利なデータを持っています。それを開示できるのは,利用を考えている施設の管理者や利用者に対してだけです。

アルコール,次亜塩素酸ナトリウム,塩化ベンザルコニウム,過酸化水素水などは消毒剤として信頼できますし,広く実験データが公表されています。ですが,次亜塩素酸水(溶液)に比べると,使用の際には気を遣う薬品です。

デメリットを理解したうえで使えば,次亜塩素酸水(溶液)は除菌・ウイルス不活化の効果があり,安価で安全性が高いというメリットがあります。

日本生まれのこの「次亜塩素酸水(溶液)」を消毒・除菌のできる薬品として認めてほしいです。国内はもちろん,経済的に厳しい国への援助の一つにできる可能性があります。純粋な次亜塩素酸ナトリウム溶液と炭酸水と安全な水,そしてキッチンスケールか計量カップが揃えばどんなへき地でも作れます。

今回は,まるで悪者のようになってしまった次亜塩素酸水(溶液)の名誉を回復し,日本中あるいは世界中でジャブジャブ使おう!という趣旨で書きました。これほど読むのが面倒な文章を最後まで読んで下さり,ありがとうございます。

発行元情報
店長のひとりごと(クリンサーブ店長ryoの不定期通信)

発行者:ハウスクリーニング専門店クリンサーブ
    店長 清水龍宴(しみず りょうえん)
    370-0884 群馬県高崎市八幡町147-3

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