エアコンクリーニングの長い道のり
昨年5月中旬に,Yさんからメールをいただきました。Yさんのお宅は前橋市粕川町にあり,当店の営業範囲で最も遠方に当たります。2007年7月に天井埋め2台,壁埋め1台のエアコンクリーニングをさせてもらいました。このたびはもう1台ある壁埋めを含めて4台洗いたいというご希望です。
お見積りをさせていただきましたが,6月中旬に「今回は見合わせたい」というお知らせをもらいました。違う業者さんが決まったのかなあ?ちょっとがっかり。
そして今年の4月末に,「今回はぜひお願いしたい」というメールがあり,とてもうれしかったです。6月半ばまでには終えてほしいということでした。5月中旬の2日と予備日をご提案して,ご注文いただきました。
先回はリビングのエアコンの下にアップライトのピアノがあり,専用の滑り板に載せて移動しましたが,今はグランドピアノがあるそうです。Yさんの手配で,ピアノはエアコンクリーニング当日の作業前後に専門業者が移動してくれることになりました。
Yさんのお宅は外装・内装とも無垢板をふんだんに使った山小屋風です。南側に大きな欅(ケヤキ)と朴(ホウ)が植わっていて,心地よい日陰を作ってくれます。別荘といった趣ですね。
1日目
約7年ぶりにお会いしました。ご自身では「80代にもなると,向こうからひたひたと迫ってくる」とお感じになるそうですが,お元気そうで何よりでした。
まずはピアノ移動が済んでスタンバイしているリビングの天井埋めエアコンから。ダイキンC32CXV,だいたい20年選手です。内部に電気式空気清浄機が付属しています。いろいろ試しましたが,配管根元側を引き下げられず,モーターは抜いたのですがファンを残したまま洗いました。先回はモーター付きで洗ったのでちょっと進歩しました。
分解に手間取ったのですが,ほぼ3時間で復元,しかし試運転すると2本あるルーバーのうち細い方が動いていません。コネクタかなと思ったら,ルーバーの軸受けがモーターの軸にはまっていませんでした。この修復で20分ほど。当初3時間後にピアノを戻せないかというお話だったのですが,もう少し時間がほしいと言って正解でした。
2台目は2階の天井埋め込みです。屋根勾配まで壁面が立ちあがっていて,2階天井部分は床から3.6mの位置にあります。先回はYさんのお宅の脚立を借りて作業しましたが,今回はこちらの持ち込んだものとの間に足場板を渡してやったのでかなり順調でした。足場板が1.8mの位置です。下を向くとくらくらします。
こちらは2000年ころの製品で型式はF50ACV,もともとはほかの3台と合わせて1台の室外機につながっていたのを,ここだけ入れ替えて別系統,能力を上げたそうです。こちらは新しいこともあり,ファンもモーターも抜けました。お天気も良くパーツが良く乾きます。サービスで天井裏にある空気循環用ファンのフィルターを外して洗いました。4枚目は,毎度お茶の時間に出してくださったノンアルコールビール。うまかったです。
このエアコンが一番使われているそうで,お孫さんが滞在する期間はフル稼働,さすがにそれだけ汚れていました。熱交換器はノズルを差し込んで天井側から下に向かって洗うと,気持ちよくカスが飛んで流れていきます。
2台目は組みあげて試運転して順調!と思っていたら,しばらくして停止,運転ランプ点滅。リモコンでエラーコードを表示させると,ファンモーター動作異常。そうだ,ファンモーター部分で抜いたプラグを挿し忘れています。モーター復元という一つのヤマを通過して安心して,失念しました。ここでやはり20分ほど修正。1日目の作業は4時45分ごろ終了しました。
2日目
先回は2階の分をさせてもらった壁埋め込み型エアコンクリーニング,型式はC280LXV,今回は2階と1階の2台をご要望です。壁埋め込みといっても,大きな天袋のような空間に,室内機が置いてあるという設置方法です。そして室内機は室内側からの分解を想定しておらず,上下左右からビスを使っているので,配管などは全て外して室内機を丸ごと引き出し,分解する必要があります。
というわけで,冷媒ガスのポンプダウンが必要になります。室内機を強制運転し,コンプレッサーが安定して働くようになってから室外機の液管の弁を閉じます。しばらくそのまま運転すると,コンプレッサーの負圧で冷媒が室外機にほとんど戻ります。この段階でガス管の弁を閉じれば良いのです。
室外機の配管を見ていると,液管が凍り始めて真っ白になりました。ガス不足の症状です。そして2台目の壁埋めを運転させると,室外機がとまってしまいました。室外機側面の2枚目の防水蓋を外すと,なにやらLEDが点滅しています。外したふたの裏側にある対応表で確認すると,OL作動です。ガス不足とか冷媒系統のつまりとかだそうです。
しばらく休ませるとエラーがなくなり,再度ポンプダウン開始。そろそろと思って弁を閉めようと思ったら,また室外機停止。
ここでYさんの提案でダイキンに電話。何度かお世話になっている修理技術担当に相談します。ガスの不足が疑われることや,ポンプダウン中に停止したことなどをお話ししました。コンプレッサーの負担が高くなってサーモスタットが働いたのではということです。しばらく休ませて動けば作業を続けられる,全く動かないようであればサービスを呼んでくださいとのことでした。
心強いのはYさんがダイキンを信頼していて,サービスを呼ぶことを全く躊躇されないこと。古い型式だから年に一度は呼ばなくちゃね,とおっしゃいます。ほとんどの場合費用が発生しますから,メーカーサービスを呼ぶというのは,こちらも気が引けるのです。
そんなわけで1時間ほど休ませてみると,エラーが消えました。お昼を食べて,午後早くからポンプダウンに取り掛かりましょう。この時点で3時間のタイムロスになりました。下の2枚は1階の分で起きたトラブル。後で説明します。
ポンプダウンができれば,冷媒配管2本とドレンホース,Fケーブルを外して,室内機を引きずり出します。これが2階の分の取り外しの様子です。
室内機は上下左右からドライバを使ってバラバラにしていきます。このように強力な送風ファンの付いた設計で,熱交換器もびっくりするくらい厚みがあります。この箱の中では,ただ置いてあるというような作りです。洗い終われば元のように組み立てて,配管を接続し直します。先回はスキルも道具もありませんでしたが,今回はフレアを加工し直して,トルクレンチで締め直しました。配管は断熱加工して戻します。
1階の分に入るところで3時半,6時までかかりそうですがよろしいでしょうか?OKをいただきました。そんなわけでペースを上げて分解クリーニング。ちょっと2階の分と違ったのは,フレアナットまわりが白っぽく腐食した感じがしたこと。
今回は洗浄を全て弟に任せて,僕の方はフレア再加工を先行しました。これが予想以上に難航します。接続部分直後から曲げてあるため,加工がうまくいかないのです。何度か切り直し,たぶん10センチくらいは短くなりました。取り外し,分解洗浄した室内機はなんとか雨が降る前に組みたてが済みました。
熱交換器はそれほどではありませんでしたが,ファンや木製の格子などはかなりカビが出ていました。
そして今日最後の試練が!トルクレンチで締めると,ピシッと音がしてナットが割れたのです。(4枚目の写真下部参照)たぶん疲労を起こしていたか,腐食して弱くなっていたのでしょう。フレアナットの在庫はありません。15分ほど行けば比較的大きなホームセンターがありますが,フレアナットがあるかどうか?(実際にはなかった)。予備日の明日を使わせていただくことになりました。今日の帰りにスーパービバホーム高崎店に寄って買いましょう。
ビバホームで見ると,ナットの厚みがずいぶん違うことに気づきました。より丈夫になっているんでしょうね。(この時は,明日もここまで戻ってパーツを探すとは夢にも思っていませんでした)。
3日目
写真は1階の分の洗浄前後概観です。下は買ってきた新品ピカピカのナット。これで安心。フレア加工は片芯コーンラチェット式です。今回のフレア加工では,リーマーの切りくずが配管に残らないようにすること,接続部に近い部分で曲げられていてフレアツールがうまく使えなかったこと,左手で回すことなど,経験の浅い僕はいろいろ難儀しました。
朝1番に壁埋め込み式2台目の配管が終わり,いよいよ真空引きです。お昼までかかると申し上げていたので,これで漏れがなければかなり順調に終わります。ところが…
これも経験不足からくるのですが,真空ポンプが室外機につながらないのです。僕のポンプはホースとも410A用の構成だったので,1/4サイズのねじには大きすぎます。2つアダプターが同梱されていましたが,それも役に立ちません。
Yさんに事情を説明し,アダプターを買いに戻ります。大胡のカインズホーム×,西片貝のヒロタツールボックス×,結局スーパービバホーム,真空ポンプ関連のコーナーへ。無事にそろえられたと思ってYさん宅へ戻り始めて5分。サイズ違いに気づきます。もう一度お店に戻って,2個のアダプターと念を入れてR22用のホースも購入。
自分の真空ポンプが5/16,室外機が1/4ときちんと理解していればもう少しスマートに行ったのですが,痛い思いをして学んだ成果です。結局Yさんのお宅に戻ったのがお昼を回ってから。真空ポンプに無事接続できました。ポンプに付属していたアダプターは,真空ポンプ側に取り付け,R22用ホースをつなぐという趣旨だったんですね。今回は室外機側のアダプターを買うために奔走したので,それを使って410A用ホースで吸い出しました。
真空引きをしていると,Yさんが様子を見に来られました。こちらとしては準備不足や不手際の連続という感じがありましたが,Yさんは知らないことでもあきらめずに挑戦している,そしてなんとか完了までこぎつけたことを高く評価して下さいました。7年前,当初は無理と思われた壁埋めエアコンクリーニングを,メーカー問い合わせの上施工した時から,すごくひいき目に見て下さっているのです。恐縮です。
せっかくなので1時間ほど真空引きし,置き針をして20分ほど様子を見ます。針は少しも動いていません。ドキドキしながら,天井埋め,2階壁埋め,1階壁埋めの順で一つづつ試運転。コンプレッサーが作動するのをそれぞれ確認しました。複数動かすとまたOL作動しそうだったので。終了が3時半。もっともエアコンクリーニングは終了しましたが,ガス不足では本来の冷房機能が期待できません。当店としては冷媒ガス補充もやってみたい分野ですが,それはちょっと背伸びしすぎかなと思います。ダイキンのサービスにゆだねます。(どこから漏れたかですが,室外機の接続部も,室内機の接続部もオイルは感じませんでした。あえて言えば1階壁埋めの接続部のナットの腐食があやしいです。今回は2個とも新品になったので,とりあえず機械が壊れるまではガス補充で使えるのではと期待しています)。
Yさんは,使ってもらえるなら嬉しいと,いろいろなものを下さいました。パイオニアの重ーいアンプ,漬けもの樽と重し,ラチェットレンチのセット,電動丸のこ,ハンドポリッシャーそのほかいろいろ,弟には映画などの録画された大量のVHSビデオ。大事に使わせていただきます。
奥様にも大変良くしていただきました。Y様,このたびもたくさんの経験をさせていただき大変勉強になりました。3日間のお付き合い,どうもありがとうございました。
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